沈埋トンネル(ちんまいトンネル)とは、予め海底や川底などに溝(トレンチ)を掘っておき、そこにトンネルエレメント(沈埋函)を沈めて土をかぶせる、沈埋工法(ちんまいこうほう)で作られたトンネルである[1]。水底トンネルの一種である[2]。
工法沈埋トンネルの断面図。
トンネルエレメント(トンネル構造体・沈埋函(ちんまいかん))は一定の長さで製作したトンネルの一部である[1]。 沈埋工法のアイデアは、1876年にジョーン・トラゥトワインが工法の特許を取得したことが記録に残されている[1]。1885年にオーストラリア・シドニー湾で、380 mの水道管函体を海底に敷き並べて施工したものが世界最初と言われている[1]。現在の沈埋工法と呼ばれるような本格的なものは、1894年にアメリカ・ボストン港で施工した下水管トンネルである[1]。鉄道用としては、1910年にアメリカ・デトロイト川をくぐるミシガン・セントラル鉄道トンネルが最初のものである[1]。 海外ではアメリカ、オランダなどで鉄道、道路、上水道、下水道などのトンネルとして幅広く採用されている[1]。 日本国内では1935年(昭和10年)に計画され、1944年(昭和19年)に完成した安治川トンネルが最初である[1]。戦後では1963年(昭和38年)に首都高速羽田線羽田トンネルに採用されたことで、大きく知られるようになった[1]。 日本国内では約30件ほどの施工例を有する[2]。 沈埋トンネルは、海底や川底などにトンネルを作る際に、開削トンネルやシールドトンネルと比べて、浅い位置にトンネルを作ることができる[3]。浅い分だけ、トンネルへの勾配も少なくなるので、建設費が高額なトンネル部分の長さを短くすることが可能である[3]。 トンネルエレメントは地上で建造されるため、高品質な躯体を製造することができるほか、沈埋トンネル自体に浮力が働くため、見かけの重量を軽くすることができ、海底が軟弱な地盤でも特別な基礎工事が不要となる[3]。沈埋トンネル工法は、一種のプレハブ工法ともいえる[1]。 沈埋トンネルを作成するための沈埋工法は、特に水底に溝を掘る工事の際に、海や川に少なからぬ影響が出ることがある[3]。 造船所内で鋼鉄製の鋼殻を基礎枠として、コンクリートを打設しながら構築する「鋼殻方式」とドライドック内でコンクリート製の函体を構築する「ドライドック方式」に大別される[4][3]。前者はアメリカ、後者はヨーロッパを中心に発達してきたものである[3]。 エレメントの長さは道路用、鉄道用で100 m前後のものが多い[5]。特にドライドック方式は大きさの制限が少なく、大断面のものを造ることができる[3]。
トンネルエレメント製作 - トンネルエレメント(エレメント)をドライドックまたは造船所で築造する[1]。
基礎工事 - 水底のエレメントを設置する位置に、浚渫船を利用して底が平らな溝(トレンチ)を掘り、エレメントを沈設する部分を作る[1]。
曳航 - エレメントの両端をバルクヘッド(仮隔壁・止水壁の役割)で閉塞して浮上させた後、船舶で目的の位置まで曳航する。
沈設・埋め戻し - アンカーワイヤーで位置の調整をしながら、所定の位置でエレメント内のバラスト(水または砂利など)を使用して沈め、水底に予め掘った溝(トレンチ)にエレメントを沈設する[1]。
内部構築 - 内部の仕切り壁などを構築し、トンネルとして機能するようにしてゆく[1]。
完成 - エレメントの側部と上部を埋め戻すことによって、エレメントを安定させれば完成する[1]。
歴史
特色
利点
欠点
エレメント構造沈埋トンネルに用いるエレメント。沈埋函とも呼ばれる。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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